好きよりも、キスをして


「(はぁ、はぁ……止まってる?)」



二人が話をして止まってくれているのは、私にとっては好都合だった。今のうちに――と上履きから靴に履き替えて、急いで距離を詰める。

だけど――



「それに、ホラ。静之くん喋れないから、ちょうどいいよね?

うっかり口が滑って本当の事を言っちゃうって事もないし。私さえ上手く回せば、絶対元カレのこと騙せるかなって!」



ズキンと。ビリリと。

私の心に亀裂が入る音が聞こえる。


さっきまで沼田くんに小言を言われても何も動じなかった私の心が、静之くんの心に同調するように「悲しい」と私の脳に訴えかけてくる。



「(枝垂坂さん……最低な人だ。最悪な人だ。静之くんの事を考えて言ってるの?)」



そう思い、呑気に笑う枝垂坂さんから視線を外す。そして、静之くんへと目を移した。

だけど、

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