好きよりも、キスをして


「(静之くん……?)」



目の前の彼は、あんな酷いことを言われても、さっき教室でしていたのと同じような笑みを浮かべて、枝垂坂さんの話を聞いていたのだった。



「(~もう!静之くんの馬鹿!!)」



何の前触れもなく、私は駆け出した。勢いよく。何かに怒りを込めながら、力強く地面を蹴った。

そして――



グイッ



静之くんの手を掴んで、思い切り引っ張る。枝垂坂さんではなくて、私の方に。こっちに来いと、そんな意味を込めて。



「ちょ、ちょっと!静之くん!?」



背中に、枝垂坂さんの大きな声がぶつかる。あの声色は、驚いている。そして、怒っている。

だけど、怒りたいのはこっち。静之くん。そして、私。


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