好きよりも、キスをして
――――あてもなく走った私たちは、その後、やっぱりあてもなく、さ迷い歩いた。
繋いでいた手は、いつだったか外れた。フッと、まるでお互いの力が抜けるように。
そして、ここがどこで、今が何時で……とかは全く気にならなかった。
そう、私が気にしているのは、静之くん。その人の事だけ。
「……喉、乾いたな」
「……」
ポツリと。なんとなしに言うと、静之くんは私の肩をトントンと叩き、近くにある自動販売機を指さした。
「買う?」というと、静之くんは頷く。二人の足は、自ずと自販機に向かった。
「私、炭酸がいいな。シュワ―って、ブクブクしたい気分」
「(……ぷ)」
「あ、笑ったな」
静之くんの顔が、綻んだ。私は、そんな彼を見て、ようやく自分も笑う事が出来た。