好きよりも、キスをして
その時に、静之くんが慌てた表情で、私の腕を掴む。なにかを止めようとした動きだったけど、一歩間に合わず……。私は、缶を開けてしまった。
すると――
ブシャアアァァ……
噴水のように目の前に湧き出るジュース。二人の制服が平等に塗れた時に、やっと、
「そうだ、これ……炭酸ジュースだった……」
と、助けを求めるように、静之くんを見つめたのだった。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ぷ」
どちらが先に笑ったかは分からない。でも、たぶん、同時であったと信じたい。
私が声を出して笑った時は、静之くんもお腹を抱えて笑みを浮かべていたし。静之くんがお腹を抱えた時は、私も笑みを浮かべていた。