好きよりも、キスをして



「(どうして、そんな切ない顔をしているの?静之くん)」



眉間にシワを寄せて。だけど、垂れた目じりが、何だか泣きそうにも見えて。

静之くんは大きいはずなのに、目の前の彼はとても小さく見える――そんなことを思った時に、ソッと唇は離された。



「はぁ、はぁ……」

「(……)」



肩で息をする私とは対照的に。静之くんは、涼しい顔で、膝に手をつく私を眺めていた。

キョロキョロと周りを、今更ながらに確認している。そして、私に「OK」とジェスチャーをした。

誰もいない、さっきの事を見られていないって、そう言ってるのかな?


それは、良かった……。だけど、そんな事を感じる暇はないくらい、目がチカチカするような衝撃的な時間だった。すごい疲労感だ。

ふう、と一声かけながら、その場にしゃがみ込む。すると私に倣って、静之くんも隣にしゃがみ込んだ。

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