好きよりも、キスをして
ブー
「あのキスは一体どういうことって、聞いてもいい?」
「……もう聞いてんじゃねーか」
今日もブザー音が鳴った後に、部屋に集合する私と静之くん。
夕方に離れた時の彼とは違って、今日もまたダルンダルンの黒のジャージを着て、マグカップを危うい角度で持っている。
静之くんは地べた。私はソファ。
座った後に「そういや、昨日はこのソファに押し倒されたな」なんて危機感を覚える。後の祭りだけど。
今更位置を変えるわけにもいかず。そして沈黙にも耐えかねて。
私はついに、今日の事件について聞くことにしたのだった。
「静之くんとは付き合ってる。けど、昨日からでしょ。なんでいきなり、キ…………キスなんて。しかも、あんな公衆の面前で!」
「キスっていうまでに、すげー時間かかったな。さすが、ファーストキスがまだだった女」
「ちゃ、茶化さないで!」
ダンと握りこぶしをソファにたたきつける。
だけどソファが柔らかすぎて、私の怒りも「ぽす」という可愛らしい効果音に代わってしまった。