好きよりも、キスをして

その事に更に腹が立ってワナワナ震えていると、静之くんはマグカップを置いて「言ったじゃねーか」と私を見据える。



「い、言ったって、何を?」

「お前のファーストキスは貰うって」

「今日、あんな形でとは聞いてない!」

「へーへー」



静之くんは、怒られているという自覚がないみたいだ。私の声は右から左の原理で、彼の体をすり抜ける。全く反省していない、というのが手に取るように分かる。



「別に、静之くんと付き合ってるって……内緒にしたいわけじゃないよ。ただ、時と場所を考えてほしいの!」

「時と場所?例えば?」

「~っ」



そんなの、私が知りたいよ――という言葉を飲み込んで。ありのままの言葉で、必死に伝える。



「そ、外で、どうしてもしたくなったら……一瞬で、ちゅって、終わらせて」

「……」

「……」

「……ぷ」



静之くんが大声をあげて笑ったのと、私が「笑いたいなら笑えば!?」と声を上げたのは、ほぼ同時だった。

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