好きよりも、キスをして


「(終わりを見据えた関係で、静之くんと、これから付き合っていくのかな)」



例えば、今日みたいに初めて手を繋いだ時も。初めてキスをした時も。ジュースをかぶって笑い合った時も。

その先に「別れ」を感じながら、静之くんと過ごす「初めて」を経験していく――



「(そんなの、嫌だな)」



すると、自分でも驚くほど滑らかに、口が動いていた。その瞬間、静之くんは、私を見た。凝視していた。


その姿は、私の動く口の形を、知りたがっているようにも見えた。



「期間を、決めないといけないのかな……?」

「どういうことだ」

「例えば、一週間だけのお試しって、期間を定めたとして」

「短いな」

「た、例えば、だから!」



静之くんは手をヒラヒラさせて「分かってるよ」と言った。

現実で喋れない時にジェスチャーを使うことが多いからか、夢の中の彼も、身振り手振りが多い。そして動作が大きい。


だけど、別に気にならない。


だって、その方が、夢の中のぶっきらぼうな静之くんに似合っているから。

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