好きよりも、キスをして


「で?一週間と定めたとして?」



なかなか話し出さない私に痺れを切らしたのか、静之くんから催促が来る。こういうせっかちな所も、今の彼らしい。



「付き合い始めて、それで、一週間後……更に好きになってたら、どうするの?」

「は?そんなん、相手も好きになってるか確認して、お付き合い続行だろ」

「そっか……。ならさ、その一週間の間に悩んだ時間って、悲しい思い出にならない?」

「……どういうことだよ」

「結果的に、一週間後のお試し後も無事に付き合えたとしても。

きっと、その一週間の間は、とても悩んだと思う。あと少しでお付き合いは終わるのに、こんなに好きになっちゃって、どうしよう……って」

「……」



静之くんは、もう喋らなかった。

その代わり、マグカップの中のコーヒーを、コクンと喉を鳴らして飲み込む。


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