好きよりも、キスをして
「じゃあ、キスしよーぜ」
「な……!?」
近づいてきて、何をいうかと思いきや。
開口一番、彼が口にしたのは性欲だった。
「やめてよ、今は……そんな雰囲気じゃ、なかったでしょっ?」
「夕方のキスの方が、そんな雰囲気じゃなかったと思うけど?」
「で、でも、今も違うから!だから、ね?」
ソッと両手で静之くんの胸を押し返す。すると、思った通りだけど、ピクリとも動かない。
グググー―と両者の拮抗が続く中、静之くんは口を開いた。
「お前の恋愛初心者脳を直すには、経験を積むしかねーんだよ。恋ってこんなもんかーって分かれば、一喜一憂しなくて済むだろ」
「そ、そうだけど……!でも、だからって、いきなりキスはハードルが高いから……!」
「夕方に、あんな激しいキスしといて、今更なにを照れてんだよ」
「(まだ二回目なのに、照れない方がおかしいって!)」