好きよりも、キスをして
すると沼田くんは少しの間、静かになった。もっとヒートアップしちゃうんじゃないかな?って思ったけど、意外にも頭の熱は冷えていったようだ。
既に抱えていたカバンを持ち直し、鋭い眼光で私を見る。
「明日も同じ調子だったら、今度こそ許さないから」
そう捨て台詞を吐いて、沼田くんは私を追い抜いて教室を後にした。
残った私と静之くん、そしてクラスメイト――皆の空気は重く、そして、淀んでいる。
静寂に包まれた教室。
この教室にいるのが嫌で、私は静之くんを初めとする皆にペコリとお辞儀をし、足早に教室を後にした。
「……っ」
ガクガクと震える足に鞭を打ちながら帰る放課後は、どうしようもなく泣けてくるのだった。