好きよりも、キスをして

「い、嫌。行きたくない……っ」

「そう怯えんな。大丈夫、なんもしねーよ。さすがにな」

「絶対?約束……っ」

「おー。するする」



気の抜けた返事を聞いていると、私だけガチガチに警戒しているのも馬鹿らしくなった。

ずっと体に力が入っていて疲れたし、ちょっと横になりたい。このフカフカのベッドの上に……。


ギシッ


観念して、私は横になる。静之くんと大人一人分くらいのスペースを開けて、手足を広げて寝転がってみた。

思った通りのフカフカ。心地いい。気持ちいい。

このまま、眠ってしまいそう……。



この部屋――寝室に照明はあるけど、今は機能していない。


静之くんが雰囲気を出すためにわざと点灯しなかったんだろうけど、今はそれが功を成して、程よい眠気を連れてきていた。


しかも、隣の部屋の電気が煌々と点いているから、ドアさえ開けとけば真っ暗になることはないし。


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