好きよりも、キスをして
「そー。親には止められたよ。
普通の高校に行くと、また小学校の時みたいに俺が塞ぎこんでしまうんじゃないかって、不安そうだった。
担任も、そして支援学校の友達もだ。皆が緊張した面持ちで俺を見ていた。
だけど俺は、試したかった。今の自分で、どこまでいけるか――無性に、試してみたくなったんだ」
「……そっか」
そうなんだね。だから、私と静之くんは会えたんだね。そこには、静之くんの努力があったんだね。
そして葛藤。悩み――
全てを一人で決めて、そして今の高校に入学した。
それは、静之くんにとって、緊張の連続だったんじゃないかなって。なんとなく、そう思った。
「ハンデを持つっていうのは、何かの機能がない分、他の所で頑張らないといけないってことだ。
俺は小学校で着の身着のまま振る舞ってたら、いじめられた。
だから、もう二の轍は踏まない。変わってやる、変わって、普通の高校でも立派に過ごしてやるって。
そう思って編み出した処世術が、常にニコニコしてる事ってわけだ」
「(あぁ……なるほど)」