好きよりも、キスをして
静之くんは何も言わなかった。代わりに、ギュッと、私を抱きしめる腕に力がこもる。
「もう黙れ」ってことかもしれない。だとしても、これだけは伝えたい。
静之くんに、どうか、届いて――
「静之くん、私はね。静之くんが弱さを見せたっていいと思う。
ずっとニコニコできる強い人って、きっと世の中に存在しない。皆、自分の弱さと一生懸命向き合いながら生きてるんだよ。
だから静之くんも、仮面の下で孤独に戦わないで。
辛い時は、私を頼って。
だって私、静之くんの彼女だもん。
力になりたい。支えにだって、何だってなりたい。静之くんが笑ったら、私も笑顔になれるから」
一気に喋ると、静之くんは「ふっ」と声を出す。きっと、笑ったんだと思う。
「……語っちゃって、ハズイ奴」
「う……いいもん。なんとでも言ってよ」
そう言ってダンゴムシのように、体を丸めようとした瞬間。静之くんが私の体をグイッと回す。
思ってもみなかった方向に力が加わり、私は簡単に、静之くんの胸の中にポスンと納まった。