好きよりも、キスをして


「……へ?」



驚いて、静之くんを見上げる。

すると、次の瞬間――



チュッ



可愛いリップ音と共に、まるで小鳥がついばむような軽いキスが、私の唇に落とされたのだった。



「え、今……」



キス、だよね?キスしたよね?


聞こうとすると、今度は静之くんが私に背を向ける。そして小さな声で「これで帳消しだからな」と呟いた。



「なにが、なにを、帳消し?」

「……お前を誤解してた事。お前の望みのシチュエーションでキスしてやったんだから、これでチャラな」

「は、はぁ?」



訳が分からない静之くんの理論を並べられて、頭に疑問符ばかりが浮かぶ。だけど、さっきキスされたのは確かだ。現実だ。

また、顔に熱が集まるのが分かった。


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