好きよりも、キスをして
「き、キスしてって、別に頼んだわけじゃないんだけどっ」
「いーんだよ。じゃあ俺は寝る。おやすみ」
「は、はぁ?もう、どこまで自由なの……」
呆れながらため息をつく。その時に、ちょいと頭を持ち上げて、静之くんのむき出しになっている耳を見る。
すると、
「(あ、色がついてる)」
それは、暗くても分かるくらい「赤」に染まっていたのだった。
「(実は照れてる?キスしたこと)」
真相は分からない。
だけど、夕方に外であんなキスを何度もしておきながら。
いま現在、ベッドで二人きりというシチュエーションにかかわらず、やらしいキスはナシ。しかもキスの回数が一回に留まっているという事実。
「(まさか、我慢、してくれてるのかな……?)」
その事実に、ドキンと胸が高鳴った。それは静之くんがするには、あまりにもジェントルマンな行動で。
彼のぶっきらぼうな言葉に似合わない言動があるのだと。初めて知る、夢の中となった。