好きよりも、キスをして
ブー
ブザーの音がして、夜が明けた。
静之くんとの距離が、物理的にも精神的にも縮まった、翌日。
ガラッ
教室に入ると、皆が一斉に私を見た。
「(え、なに……?)」
ビクリと、体が大きく反応する。
そんな私を見て、誰かが「驚かせてごめんねー」とでも言ってくれるかと淡い期待を抱いたけど……。
次に起こる出来事は、全く真逆な事だった。
「ねぇ、澤田さん。ちょっと話があるんだけど」
「(話……私に?)」
「ここで良いからさ。答えてくれない?」
「(……コクン)」
クラスの女子が話しかけてくる。その子は全く仲良くない子だ。向こうもそう思っているのか、私を見る目は冷たい。
友達だとは思っていないような目。もっと言えば、同じクラスメイトだとも思いたくないような目つきだった。