好きよりも、キスをして
「私に、すぐに謝ってほしい?」
「は?何言ってんの」
「今ここで謝罪しろって……それで追いかけて来たんでしょ……?」
「はあ?」
訳が分からないと言わんばかりに、私を睨んだ彼。
違うのか、なんだ――と思いながら「じゃあなんで来たの」と質問した。
「クラスの奴は寄ってたかって枝垂坂と静之を取り囲んでるし。明らかに澤田一人が、はみでてるし」
「はみでてるって……ひどい」
「実際そうでしょ。
俺は、自分の目で見たものしか信じない主義だから。あーゆー時の群れは、大抵ウソをつく。
だから澤田から話を聞こうと思っただけ」
「……そうなんだ」
「ふん」
沼田くんを、初めてカッコいいと思えた。というか、今まで嫌悪の対象でしかなかったし……。
彼の正義感の強さに驚く。
と同時に、私の事を信じてくれるだろうか――という不安も生まれた。