好きよりも、キスをして
「私が、ウソつくとは思わないの……?」
「そりゃ、話す内容によるよ」
「(やっぱり、そうなんだ)」
じゃあ、望みは薄いかもしれない。だって枝垂坂さんには証拠がある。頬に貼ってあるガーゼという、証拠が。
落ち込む私に「だけど」と沼田くんが、私を真っすぐ見ながら言う。
「普段、喋らない澤田が、今、こうやって必死に喋ってる。それは、何か聞いてほしい事があるからじゃないかって、そう思うから。
わざわざウソをつくために、俺と話しなんて、しないでしょ?」
「!」
フッと自虐的に笑った顔が、どこか面白くて。教室であった事がばからしく思えてきて。
「ふふ」と、私も思わず、笑ってしまった。
すると沼田くんは「澤田はそっちが似合うと思うけど?」と、私を抜かして歩き出す。
「そっちって……どっち?」
妙に聞きたくて、走って沼田くんに追いつく。そして沼田くんの隣で、一緒に歩き始めた。