好きよりも、キスをして
「だから、澤田にお礼の一つでも言ってやろうかなって思った。もちろん、嫌味で。純粋な感謝じゃないからね!?」
「わ、分かってるよ……っ」
「だけど、そう悩んでるうちに、澤田の方からお礼を言われた」
――沼田くん……ありがとね
――……へ?
そういや、そんな事あったなぁ。あの時は確か、静之くんが喋れないと初めて知った翌朝のこと。
前日に私は、自分の手のひらにペンで「静之くんは私と同じ?」って、静之くんに聞こうとした事のメモをとってた。そのメモを消す「きっかけ」を作ってくれたのは、沼田くんだった。
「(テストのカンニングを作ってるのか、なんて言われたのは腹が立ったけど)」
でも、静之くんが喋れないと知らなかったから。馬鹿な質問を思いついてしまった。それを阻止できたのは、沼田くんのおかげだ。
「それからの澤田は、なんていうか、変わったよね」
「え――?」