好きよりも、キスをして
隣同士で並んで歩く私たち。
ふいに「変わった」なんて言われて、思わず沼田くんを凝視した。
色素の薄い髪。ストレートすぎる髪。上から下まで段をいれずにカットされているから、少し量が増えれば、マッシュルームキノコみたいにも見えそうだ。
だけど、まつ毛が長い。色も白くて、背が高くて――沼田くんって、こんな顔だったんだなぁ。
「ねえちょっと、聞いてる?」
「聞いてる……聞いてる」
沼田くんを、初めて見た。私は今まで、隣の人の顔を、全く見ていなかったんだと痛感させられる。
私が見ていたのは、目の色だけ。いつも目の色を伺って、その人が私に敵意を向けていないか、常に確認していた。
沼田くんは常に、私と言う人物そのものを見ていてくれたのに。
「お礼を言われた日から、澤田はなんかイキイキしてるし。笑うようにもなったし。
それに、前は俺にビクビクしてる感じだったのに、今じゃこっちが無視されるくらいだし」
「む、無視なんて……」
「昨日。静之の後を追って、俺が声をかけてるのに一切振り向かずに教室から飛び出したのは、澤田だからね?」
「……」