好きよりも、キスをして
夢の中で、静之くんが言っていた言葉を思い出す。
――ハンデを持つっていうのは、何かの機能がない分、他の所で頑張らないといけないってことだ。
――俺は小学校で着の身着のまま振る舞ってたら、いじめられた。
――だから、もう二の轍は踏まない。変わってやる、変わって、普通の高校でも立派に過ごしてやるって。
――そう思って編み出した処世術が、常にニコニコしてる事ってわけだ
静之くんにとって、いじめられる事こそ、一番に避けたい事なんだ。
だから、いつもニコニコしているし、枝垂坂さんから何を言われても笑っていた。
そして、今日も。
一応彼女である私が、皆から敵視されていても、助けなかった。
彼は、枝垂坂さんの方へついた。彼女の肩を持った。
弱者である私は、静之くんに――彼氏に、切り捨てられたんだ。