好きよりも、キスをして
「私はまがい物って……気づけた」
まがい物のお付き合い。
まがい物の彼氏彼女。
まがい物の彼女――それが私。
静之くんの心の中に、私は存在しない。
「気づけて……良かった」
「……」
突然の恋愛話に、沼田くんは口を真一文字に閉じて、聞いてくれた。
有難かった。あれこれ詮索しないでくれると、助かる。
夢の中の事は話せないし、静之くんと付き合っているというのも、このタイミングで暴露するには違う気がするし。
でも、沼田くんなら、もう気づいてるかもしれない。私、さっき色々言っちゃったし。
だけど、沼田くんは最初こそ驚いた反応をしたけど、それきり。「ふぅん」と一言、述べたきり。
「(沼田くんらしいや……)」
いつもは冷たく感じる彼の言葉が、今では私の心の拠り所になっていた。
「沼田くん、ありがとう」
「それは、何に?」
「……ぜんぶ。本当に、全部」
「……」
沼田くんは、いつの間にか離れていた私の腕を、もう一度、掴んだ。
「え」
どうしたの――という前に、沼田くんが、グイッと私の体を引き寄せる。