好きよりも、キスをして
ボスンと、勢いよく沼田くんの体に、自分の体が当たってしまった。
「ごめん」と謝ろうとする私に、沼田くんが「選んで」と早口で、私に問いかける。
「俺は、澤田の事が気になってるから」
「……さっき、聞いた」
淡々と返事をした私に、沼田くんは「もうっ」と何やら怒っている。
え、なに?何か怒らせるようなことした?と思っていると。
目の前にいる沼田くんの顔が、いつの間にかリンゴのような真っ赤に変わっていた。
「さっきのとは違うから」沼田くんが口元に手をもっていく。そして、まるで自分を隠すように、話を続けた。
「今回の”気になる”は……そういう意味」
「え?」
「だから!恋愛感情ありきで気になるって、そう言ってんの!」
「!?」
え?沼田くんが?私に?恋愛感情ありき?
え?
「はあ……!?」
「うっさい!今授業中でしょ!!」
パシッと、口を叩かれる。塞がれるんじゃなくて、平手で思い切り叩かれた。