好きよりも、キスをして

だから分かってしまった。

沼田くんは、やっぱり全てを知っているのだと。



「(きっと沼田くんは、私が静之くんと付き合っていることに気づいている。

そして、私と静之くんの関係が平等ではない事も気づいている。好きの大きさが、食い違っている事に、気づいているんだ)」



思えば、私だって、いつから静之くんを好きになったかなんて分からない。今だって、好きかどうかも分からない。

だけど、静之くんが枝垂坂さんの頬を触った瞬間に、全てがどうでもよく思えたんだ。



「……どっちに転んでも、沼田くんにとっていい事?なんだよね?」

「そう……だけど。あんまり調子に乗らないでくれる?鬱陶しいから」

「う、鬱陶しいって!……ひどいなぁ、沼田くんは」



ハハハと笑ってしまう。沼田くんの言葉がストレートすぎて。だけど、そのストレートさが、今の私にちょうど良くて。


< 161 / 282 >

この作品をシェア

pagetop