好きよりも、キスをして
「そんな変な顔色になるなら、皆を見なけりゃいいでしょ。澤田」
「……沼田くん」
私の席の目の前に立ち、そして見下ろす彼。その眼光の鋭さと言ったら。
前の私だったら沼田くんを視界に入れただけで、ガタガタ震えていたかもしれない。
けど、今の私は、違う。
「うん……ありがとう。沼田くん」
「ふん」
「でも”変な顔色”はひどい」
「本当のこと言って何が悪いの」
「……っぷ」
相変わらずそっけない沼田くん。さっきまでは敵対関係だと思っていた。けど、今となってはクラスで離せる唯一の人になっている。
変な話だ。そして、クラスの皆も、そんな私たちの関係を、変だと思っているようだった。