好きよりも、キスをして


「見たー?静之くんを取り返されたからって、今度は沼田くんだってさ」
「うわー、見境ないねぇ。なんつーか、必死?見苦しいわぁ」
「桃ちゃんの傷を見ても無反応だったし。第一、謝りもしなかったよね?」
「それな。むしろ被害者ヅラしててムカつくし」



学校で、急に喋り出した私。しかもその相手が沼田くんという男の子だった事から、クラスの中での私の評価は軒並み下がっていた。



「(はあ。わざと聞こえるように話してくれるせいで、全部耳に入ってくる。鬱陶しい……)」



すると、



ガタッ



座っていた隣の沼田くんが、椅子を倒して立ち上がる。ど、どんな勢いで立ってるの、この人は……。

皆も、急に大きな音がしてビックリしたらしい。噂話で騒がしくなっていた教室は、一気に静まり返った。

そんな教室内をぐるりと、ゆっくり。まるでハイエナみたいな動きと目で。沼田くんは皆を眺めた。


そして――


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