好きよりも、キスをして
「(沼田くんって、案外モテ要素があったりするんだ。
……って、あれ?)」
机に伏せたままの沼田くんを見る。顔は当然見えないけど、だけど、耳は見える。その耳は、さっき二人きりの時に見たリンゴ色。真っ赤な色。綺麗なほど、真っ赤だ。
その色を見ていると、私もさっきあった事を思い出してしまう。「っ!」つられて顔が赤くなるのを、意識せずにはいられなかった。
「(沼田くんは、一体私のどこに惹かれたのかな。まだ信じられないよ。だって、あの沼田くんだよ?)」
彼には嫌われているとばかり思っていたのに。人生、何が起こるか分からないもんだな。
そんな事を思っていると、沼田くんから、また声が漏れた。
「彼、何も助けてくれなかったね」
「(彼……あぁ、静之くんか)」