好きよりも、キスをして

そう。さっき、女子が声高に私の悪口を言っている時。

静之くんはこの教室にいた。ばかりか、枝垂坂さんと何やらスマホを使って会話をしているらしくて。


その光景を目にした私。自分の悪口が飛び交う空間で、私が耳を澄ましたことと言えば――


聞こえるはずのない二人の会話の内容だった。



「(スマホで会話してるんだから、会話なんて聞こえるわけないってのに。私も往生際が悪い)」



分かっている。

どうやら、この恋は――私の一方通行らしいと。

二度も私を見捨てた静之くんが、何よりの証拠だ。



「(だけど……)」



沼田くんも、やっぱり底意地が悪い。

わざわざ、静之くんがどうだったかを、再確認しなくたっていいじゃないか。

まるで「好かれてないよ。だから諦めなよ」と言いつけられている気分。



「(沼田くん、本当に私の事を好き……なんだよね?なら、もうちょっと丁寧に扱ってくれたっていいじゃん……)」


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