好きよりも、キスをして
「今日は頑張ってたんじゃない?澤田」
「へ?何を?」
「授業中。当てられて喋ってた」
「あぁ、あれ……」
あれを「頑張ってる」と評価してくれるのか。沼田くんって本当、優しいのか厳しいのか、分からない。
「頑張ってるでしょ。一言も喋らなかった、前の事を思えば」
「そうかなぁ……。でも、うん。ありがとう」
「ふん、別に」
今更だけど、沼田くんの人柄がつかめて来た。彼はハイパー、ツンデレ男子なんだ。だけど、その事をいうと、また怒鳴られそうだから、言わないでおこう。
「沼田くんはさ、いつ、私の事を……その……」
「好きかって?」
「そ、そう……」
自分で切り出しておいて照れる私とは反対に、沼田くんはのっそりのっそりと、ゆったりした足取りで車道側を歩いていた。行きかう車を掴んで、投げ飛ばしてしまいそうな彼の大きさ。その隣に、小さく佇む私。
もし私たちがカップルになったら、だいぶ凸凹なカレカノになってしまうな――
なんて、先走った想像をしていた。その時だった。