好きよりも、キスをして
「学校でも言ったけど、澤田の事は最初は大嫌いだったから」表情を変えずに。
空を仰ぎ見ながら。沼田くんは、そう言った。
「でも、喋り始めるようになって急に色がついたっていうか。澤田って人間が、強烈に俺の中に入ってきた」
「私という、人間?」
「変な人間」
「ヒドイ」
「でも、そうでしょ。喋り始めたと思ったら、ノートを持って静之の所に行ってニヤニヤするし。俺に意味もなくお礼を言ってきたりするし。かと言えば、素直に謝ってきたり。
コイツ何考えてんの?何を思って行動してんの?って、気が散ってしょうがなかった」
「(気が散るって。言い方が……)」
多少、彼の物言いに引っかかるものの。受け流して、続きを聞く。