好きよりも、キスをして


「だけど、同時に思ったんだよ。もっと知りたいって。澤田が何考えてんのか、澤田ってやつがどういう人間なのか、もっと知りたいって。急かすように、俺の目が、澤田を追いかけた。別に、ストーカーとかじゃないから!」

「わ、分かってるよっ」

「でも、だからこそ気づいたんだ。

常に目で追う。相手の事を知りたいと思う――それは恋愛感情ありきで、気になってるって事なんじゃないかって」

「……」

「後は、知らないよ。

今日だって、気づいたら澤田を追いかけてたし、澤田の腕を握ってた。気づいたら告白しちゃってるし……。俺だって、わけわかんないよ。

自分の知らないうちに人生が進んでるようで、嫌だ。恋って嫌だし怖い」

「(そんなことを……)」



沼田くんでも、そんなことを思うんだ。目力だけでクマをも倒せそうな人なのに。こんなに、大きな人なのに……。



「(不思議。さっきよりも、沼田くんが近くに感じる……)」



それは、圧倒的な親近感。沼田くんは、私と同じなんだって、気づいたからだ。



「(気づいたら目で追う、相手を知りたいと思う……。そうだ、同じだ)」



沼田くん、私も同じなんだよ。静之くんと付き合うようになったのだって、私が静之くんの事を「知りたい」って思ったのがきっかけで。

そうか、そうなんだね。

そこから、私の恋は始まってたんだね。

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