好きよりも、キスをして
「(枝垂坂さんが沼田くんに初めて近づいた時、すぐに私がメールを送れたのは……。私が静之くんの事を、ずっと見ていたからなんだ。目で追っていたからなんだ)」
そうか。私は、ずっと静之くんを追いかけて居たんだね。静之くんの事を、本気で好きだったんだね。
だから、傷ついたんだ。好きな人に庇ってもらえなくて、心が泣いていたんだ。
「(大好きに、なっちゃったんだ……っ)」
グッと、手に力がこもる。改めて気づいた、静之くんへの恋心。だけど、もう遅い。気づくのが遅すぎたんだ。
私は、自分の恋心に気づかないまま、静之くんとの時間を自由気ままに過ごして……。そして離れた。
バカだなぁ。時間ならあったのに。たくさん、あったのに。
どうして私、静之くんにアタックしなかったんだろう。どうして本気で「好きだよ」って言えなかったんだろう。
もしも私の想いを伝えられていたら、現状が、変わっていたかもしれない。私の隣には静之くんがいて。昼間に枝垂坂さんとやっていたように、スマホで会話していたかもしれないのに。
「(チャンスを逃したのは、私だ……)」