好きよりも、キスをして


「え、はあ?何泣いてんの!?ちょっと恥ずかしいから拭いてよ、ホラ!」



手渡されたのは、ハンカチ。こういうとこも、沼田くんはしっかりしてるなぁなんて感心しながら、有難く受け取った。

私の目に映し出されるのは、私の視界いっぱいの沼田くん。

だけど。

私の頭に浮かんでいるのは、いっぱいの思い出がある静之くんだった。


だって――



「(私が強くなれた理由こそ、静之くんの存在があってこそだから)」



沼田くんの言う通りだ。

昔の私だったら、女子から悪口を言われたら「どうしよう、どうしたら」って、ただ震えていたと思う。クラスのみんなから疎まれて、蔑まれて……。そんなの耐えられない。


けど、今の私は違う。

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