好きよりも、キスをして
あの時――枝垂坂さんから静之くんを奪った、あの瞬間の私は、絶対に間違えてなかったって。そう自信をもって言えるから。
私は間違ってないって、むしろ私が正しいんだって、胸を張って言えるから。自分の心に真っすぐ伸びる信念があるから。私は、強くいられたんだ。
確かに、枝垂坂さんは元カレにぶたれて可哀想だと思う。
けど、じゃあ、静之くんは?
事実を喋れないから、枝垂坂さんから、どんなにヒドイ事を言われても、大人しく泣き寝入りしろって?
そんなの、
「(ふざけんな)」
私が枝垂坂さんに謝るのは、静之くんを傷つけるのと同じ事だ。だから、私は絶対、謝らない。
私は、自分の彼氏を守りたい。
ただ、それだけ――
「(強い私も話せるようになった私も。全部ぜんぶ、静之くんのおかげだった)」