好きよりも、キスをして
「どーぞ」
「(……ペコリ)」
いきなり訪れたアパートの一室。そこにいたのは静之くんで……。その静之くんに、私はたった今、ジュースを出された。缶ジュースだけど。
「梅ジュース好き?」
「(……コクン)」
「良かった。俺キライなのに、なぜか部屋にたんまりあんだよ」
「……」
へー、そうなんだ――じゃなくて。
私はずっと玄関に立っている。目を開けた時に玄関にいたからって言うのもあるけど、なんか……入りにくい。
だって意味がわからないし。
そもそも、意味が分かっても、きっとここ、静之くんの家だし……。私と静之くんは、お互いの家を行き来して遊ぶ仲ではない。
告白をされた、という仲ではあるけれど……。
「(って違う違う、そうじゃなくて……ッ)」
元々喋らないのと、パニックで何から喋っていいのか分からないのと……。
頭が爆発する。何から考えたら良いのか分からない。
「(とりあえず、ここは……静之くんの家って事で、いいんだよね?)」
だけど、部屋はワンルーム。どう見ても家族が一緒に住める広さじゃない。しかも置いてある荷物も最小限な所を見ると――
もしかして静之くん、一人暮らし?