好きよりも、キスをして
静之くんへの恋心も。静之くんへの感謝も。彼がそばにいなくなって、初めて気づいた。
そう。もう、彼は私の隣に並ばない。炭酸ジュースを買う事もないし、二人で制服を汚すこともない。
悲しい、悔しい、辛い、戻りたい。
色んな感情が、私の頭のてっぺんから足のつま先まで、グルグルと、とぐろを巻いている。
だけど、いいんだ。
「(静之くんが選んだ答えなら、それでいい。きっと、それが正解なんだ)」
静之くん。ふがいない彼女でごめん。私ばかり良い思いをして、私があなたにあげられたものは、何もなかった。
だから、最後に。
あなたが罪悪感を抱かないように。私は、あなたから離れようと思う。
「おい、本当に澤田、変だから!なんで泣いてんの?どっか調子悪いんじゃないの?病院行けば!?」
アタリのキツイ言葉とは裏腹に、その手にはスマホがあって。開いてる近くの病院を、必死に探してくれている。
その姿を見ていると、温かくて。また泣けてきて。
最大限の「ありがとう」を、いつか彼に伝えられたら、と。そう思わずには、いられなかった。