好きよりも、キスをして
「ひゃっ……!さ、澤田、さん……っ」
「……」
私をいち早く見つけた枝垂坂さんは、私を見ると怯えた表情をして、静之くんの後ろに隠れた。私がクマにでも見えるのだろうか。クマなら、さっきまで一緒にいた沼田くんの方が適任なのに。
と、こんな風に冷静に分析できるのは、きっとさっき沼田くんと話せたからだ。泣けたからだ。静之くんへの思いがはっきりしたからだ。
そして、この先の展望も――
「(今日の夜、夢の中で)」
「!」
幸い、枝垂坂さんから私は見えていない。完璧に目を背けているようだった。これは好機とばかりに、私は口パクで静之くんに「約束」をする。
夢の中で、と。
すると、口パクの意味がわかったらしい静之くんは、驚いた目で私を見ていた。ビックリしたかな?諦めの悪い女だって、そう思ったのかも。
だけど、安心して。