好きよりも、キスをして
「なんで私を押し倒してるの……静之くん?」
その問いに、しばらく時間をかけて。静之くんは、やっと口を開いた。
「それは……こっちのセリフだ。どういうことだよ、朱音」
「どういうことって、何が……?」
「”最後だから”って。どういうことだよ」
学校からの帰り道。たまたま出会った静之くんとの、秘密の会話。
その去り際に言った言葉が、きちんと届いていた――
その事に、心のどこかで安堵を覚えた私がいた。息を吐きながら「そのまんまの意味」と答える。
「付き合うのが最後。彼氏彼女でいるのも最後。こうやって夢の中で会うのも……最後、にしたい」
最後の事は自分の意志でどうにか出来そうにないから、小声になる。だけど静之くんにとってはどうでもいいようで。
尚も怒ったような表情を浮かべながら、「ハッ」と失笑を漏らす。