好きよりも、キスをして
「俺に枝垂坂を押し付けて、お前は沼田と引っ付いて。それで無事にハッピーエンドってわけか?」
「は?何言って、」
「幸せそうな顔してたもんな、朱音。沼田と帰ってる時」
「!?」
幸せそうな顔……?私が、静之くんへの想いを噛み締めていたあの時……?
「……バカに、しないで」
沼田くんへの想いじゃない。
あの時抱いていた気持ちは、あなたにこそ、分かってほしかった。私の全てなのに。
「教室で私を助けなかったのは静之くんでしょ?私より枝垂坂さんが良いから、あっちの味方をしたんでしょ?なのに”押し付ける”ってなに?自分の足で、枝垂坂さんの方に歩いて行ったのは……静之くんの方でしょ!?
それに沼田くんは、そんなんじゃない。沼田くんに、失礼な言い方……しないでよ」
「!」