好きよりも、キスをして

私の予想は当たっている、と思う。だけど、違和感もある。それは、窓から見える外の景色。

既にカーテンがされていて見えないけど、雑に閉められているから隙間から外の色が見えた。


外の色は、黒。

つまり――夜。



「(外は真っ暗……今は四月なのに?夜の7時前でも、まだ明るいはず。

え、今は何時なの?)」



部屋の中を見ると、時計がない。

そうか、一人暮らしだからスマホ一台あれば、それで充分なのかもしれない。「いま何時?」って静之くんに聞こう。


と思って開けた口を、しっかり閉じる。


今まで自分がいつどこにいるのか?って事しか気にしてなかったけど……。


静之くん本人を改めて見ると、なんか変だ。

何が……ってハッキリはしないけど……あえて言葉にするなら、雰囲気。


授業中に盗み見た静之くんや、私と沼田くんの間に入ってくれた静之くんは、穏やかそのものだった。柔らかい雰囲気で、真面目で、誠実そうな……。


だけど、正反対なのが、いま目の前にいる静之くんだ。

< 19 / 282 >

この作品をシェア

pagetop