好きよりも、キスをして


「う、ぅ~……っ」

「! ……悪い、やり過ぎた」

「ひっ、ぅ……っ」



パっと。私に弾かれるように、静之くんは私から退けた。

そして、息も心も苦しくて泣いてしまった私の背中に、ジワジワと手を回す。


そして抱き上げて、抱きしめる。


静之くんは、自分の腕の中にスッポリと私を納めた。そして尚も優しい手つきで、私の髪を撫でる。上から、下へ。何度も、何度も。



「(好き。嫌い。でも……やっぱり好き)」



例えあなたが枝垂坂さんの事を好きでも。それでもいい。

私を虜にする静之くんが。何考えているか分からない静之くんが。

そして、私を変えてくれた静之くんが――私は、やっぱり大好き。



「なんでかなぁ」



その瞬間、静之くんが呟いた。まるで独り言のような口ぶりだった。

< 191 / 282 >

この作品をシェア

pagetop