好きよりも、キスをして
「う、ぅ~……っ」
「! ……悪い、やり過ぎた」
「ひっ、ぅ……っ」
パっと。私に弾かれるように、静之くんは私から退けた。
そして、息も心も苦しくて泣いてしまった私の背中に、ジワジワと手を回す。
そして抱き上げて、抱きしめる。
静之くんは、自分の腕の中にスッポリと私を納めた。そして尚も優しい手つきで、私の髪を撫でる。上から、下へ。何度も、何度も。
「(好き。嫌い。でも……やっぱり好き)」
例えあなたが枝垂坂さんの事を好きでも。それでもいい。
私を虜にする静之くんが。何考えているか分からない静之くんが。
そして、私を変えてくれた静之くんが――私は、やっぱり大好き。
「なんでかなぁ」
その瞬間、静之くんが呟いた。まるで独り言のような口ぶりだった。