好きよりも、キスをして
「夢の中でなら、俺の思う通りになるって。そう思ってたのに。なんで上手くいかねーんだろうな」
「……欲深いから?」
「ふ、確かに」
聞こえないような声で言ったつもりだけど。密着している今は、お互いの心臓の音までも、クリアに聞こえていた。
「朱音の心臓、うるせぇ」
「静之くんこそ。私を襲っておきながら、こんなに心臓バクバクさせちゃって。情けなー」
「うるせぇ。また襲うぞ」
「(フルフル)」
お互い、顔は見えない。けど、きっとお互いが笑った気がする。いつもの、夢の中の私たちに戻った気がした。
静之くんも、そう思ったのか。普通に話を始める。
口にする話題は、学校の事だ。
「お前、なんで言われるがままになってんの。クラスの皆に。めちゃくちゃ悪い噂たってんぞ」
「そっちこそ。枝垂坂さんに言われっぱなしになってるんじゃない?」
「話をすり替えるな。俺のせいでお前が孤立してると、気分悪ぃんだよ」
「……放っといて」