好きよりも、キスをして
「昔から”朱に交われば赤くなる”ってことわざがあんのに。俺ら、混ざんねぇな」
「……」
「混じらなかったな。なんでだろうな」
「……そうだね」
それだけ返すのが、精一杯だった。
朱に交われば赤くなる――
白い画用紙に、赤い絵の具を垂らすと赤く染まっていくように。人は、周りの人や環境から影響を受けやすい、ということを意味する、昔からあることわざだ。
簡単に言うと「付き合う人によって、自分が良くも悪くもなる」ということ。
「俺、お前と関わって、どうなった?」
「え」
「俺、少しはお前みたいに変われたかなーって。なんてな」
「(そんなの……)」
変わったのは、私の方だ。