好きよりも、キスをして
「え、開いたんだね!」
ビックリして、緋色の傍に駆け寄る。だけど、部屋の外を見てみると――そこは、一面に真っ暗な世界が広がっていた。
「なに、これ……っ」
ブラックホールのような。落ちたら最後のような。そんな恐怖を思わせる「黒」。
言いようもない怖さが、私を襲う。
「緋色、危ないよ。下がろう!」
怖くなって後ずさる私。だけど緋色は――そんな私の手を、グッと握って、そして。
ブンと、音がするまで、思い切り回した。私の体は、緋色の手に沿って大きく動く。
そして行き着く先は――
「わ、ひ、緋色!おち、落ちるよ!?」
間一髪。片足のつま先だけで、何とか部屋の中に入っている。言えば、つま先だけで自分の体を支えていると同じだ。今、緋色が私の手を離すと、私はすぐに闇の中に落ちるだろう。