好きよりも、キスをして



「なぁ、キスしたい」

「……」




私が汚いモノでも見たかのような顔をしていると、その人は「何だよ……」と顔を歪めた。



「一応付き合ってんだから、キスくらいいいだろ」

「……イヤ」

「嫌、じゃねぇ」



短く否定をした私をチラリと見て「ハッ」と浅いため息をついた後。その人は、更に顔を歪めた。



「ここには俺とお前しかいねーんだ。嫌なら全力で拒否しろ。出来なければ……

大人しく、俺にキスされろ」

「(……あぁ)」



なんで、こんなことになったんだ。

どうしてワンルームに二人きり。こんな危ない人と、一緒にいるんだろう。



「(あぁ、そうだ……)」



そう、全てはメールから始まった。

あのメールから、私たちの歪な関係は始まったんだ――


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