好きよりも、キスをして


「ひ、緋色、たすけ……っ!」



怖くて、ガタガタ震えて。緋色に助けを求める。

だけど、そんな私を見て、緋色はいつものニヤリとした笑みを浮かべるだけだった。その表情を見るに、私を助ける気は微塵もないらしい。



「緋色!遊んでないで、お願い……っ」



懇願する私。すると緋色は観念したように、グイッと手を自身の方へ引き寄せた。途端に近くなる私と緋色。良かった、もう安心だ。

助けてくれたことに安堵して「ありがとう」と言いながら、顔を上げる。



すると、その瞬間。



チュッと。

緋色は私の唇に、触れるだけの短いキスをした。



「ひ、いろ……?」

「朱音、ありがと」

「ありがと、って……何に?」

「内緒だ」

「え、なに。どうしちゃったの、緋色……?」



その時。


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