好きよりも、キスをして
「学校……行かなきゃ」
流れる涙はそのままに。私はベッドから身を起こす。
そう、行かなきゃいけない。
だって、今日は沼田くんと一緒に帰る二日目の日だから。私を信じて待ってくれている沼田くんの顔が、どうしても頭に浮かぶから。休むわけにはいかない。
「顔、ひどくなければいいけど……」
泣いた後の顔なんて、大抵ヒドイものだ。ヒドイ顔で沼田くんと会うと、絶対に「うわ、何その顔」って言われる。
どうか、グチャグチャになってませんように――
「うゎぁ……」
祈りを込めながら覗いた鏡に映っていたのは、かなりヒドイ私だった。目のクマはクッキリ出ているし、瞼は赤く腫れあがっている。目の中さえも充血していて、顔はなぜかパンパンにむくんでいた。
「いいこと、ないな……」
こんなこと言ってごめん、と心の中で沼田くんに謝る。沼田くんは、たぶん私と帰ることを楽しみにしてくれているから。
そんな日に「いいことがない」なんて言葉を言い放ってしまう自分が、ひどく嫌に思えた。