好きよりも、キスをして
「だって、気づかせちゃったじゃん。昨日、別れ際に。静之と枝垂坂が一緒に帰ってるって事実を」
「あぁ……その事ね」
――横、絶対見ないでね。見たら許さないから
確かに。あの言葉のせいで、二人が一緒に帰っている事実を知ってしまった。
だけどね、沼田くん。それは私にとっては、どうでもいい事なの。
「違うよ。あれは別に、気にしてないから」
「気にしてないって……。言う割には、チラチラと静之を気にしてる感じだけど?」
「本当に違うよ。ただ……視界に入ってるだけ。私の目に移りこんでいる、景色の一つに過ぎないよ」
「景色って……」
確かに、教室に入った時に、私は見てしまった。もう緋色を見ないようにしようと、登校中に散々、自分に言い聞かせたのに。
結局、一秒ももたなかった。
既に登校していたらしく、緋色は教室にいた。渦中の枝垂坂さんと一緒に。
昨日と同じく、二人はスマホで会話をしているらしかった。楽しそうにクスクス笑う枝垂坂さん。