好きよりも、キスをして
「はぁ……」
何を話しているんだろうか――私は無意識のうちに、二人の方をジッと見てしまう。
すると、噂好きな女子が「待ってました」と言わんばかりに、私の事を話し始めた。
「うわー、桃ちゃんの事を睨んでるよ」
「こっわー。最低だね。誰が悪いんだっての」
「ねー。喋れないから睨むって。子供だね」
「(はぁ……もうやめて、今は聞きたくないのに)」
私の行動を、ずっと観察でもしていたのだろうか。きっと、そうなんだろうな。じゃないと、私の事を悪く言えないもんな。
暇人は、いいな。そんなくだらない事を考えて、あてもなく見境なく、気に入らない人に向かってナイフを飛ばせばいいんだから。
「それに比べて桃ちゃんは、本当に一途だよねぇ~」
「ねぇ、静之くんの傍から離れないんだもんー」
「健気よねぇ、可愛すぎる」